道路 – 役所調査マニュアル[実践編]

2項道路(みなし道路)

監修者

宅地建物取引士・公取協認定不動産広告管理者
野村 道太郎

大手不動産会社、広告代理店を経て現在は『不動産会社のミカタ』 『役所調査のミカタ』の編集長を兼務。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

監修者

宅地建物取引士
公取協認定不動産広告管理者

野村 道太郎(プロフィール)

次は条文の番号が前後してしまいますが、優先度が高いので先に2項道路を解説します。

2項道路とは「幅員4m未満であっても特例的に道路とみなす」狭い道路の救済制度とお伝えしました。たとえば、土地に接する道路が幅員2mしかなかったら、本来であれば接道義務を満たせません。しかし、もしもその道路が2項道路であれば建築許可がおりるのです。

とはいえもちろん無条件というわけにはいかず、将来的に幅員が4mになるように道路中心線から2mまでの範囲を道路として扱わなければなりません。説明のために、また品川区の資料をお借りしたいと思います。


上記の図は道路の断面図になっており、青で示される範囲が古くからある幅員4m未満の2項道路です。2項道路は幅員が4mになるように道路中心線から2mまでの範囲を道路にしなければなりませんので、図に黄色で示される部分のように不足する分は敷地を後退させて道路を拡幅する必要があります。このように「2項道路の幅員確保を目的として敷地を後退させること」をセットバックといいます。

ちなみに、セットバックは建て替えるときなど、新たに建築確認を取る時点でやれば良いことになっていますので、既に建っている家に住み続ける場合はわざわざセットバックしなくても問題はありません。なので中古住宅の売買で建て替えずにそのまま住むのであれば、あまり気にならないかもしれませんが、将来的に建て替えるにはセットバックが必要なことは変わりませんので注意が必要です。

重要なのは多くの場合で建て替えると建物が今より小さくなるということです。なぜなら、建て替え時にはセットバックで土地が狭くなるのですから、建蔽率や容積率・斜線制限などの兼ね合いで建物は小さくなってしまいます。すぐには建て替えないとしても、重要事項として必ず伝えなければなりません。

また、セットバック後は図の黄色部分を道路として扱わなければなりません。自分の所有する敷地であっても「そこは道路にします!」と役所と約束して「4mの幅員が確保できるなら建築許可するね」と特例的に許可を得ているわけですから、ちゃんと道路状に維持管理しないといけないのです。塀を立てたり、庭にしたりなど道路でない状態に変えることはできません。

ここで、入門編でお見せした参考画像を再度ご覧ください。この道路は典型的な2項道路です。直前のイメージ図のようにいい感じに凸凹してますね。

参考画像:典型的な2項道路

画像右上側に写っている電柱の奥で道路が狭くなっているのは、面する敷地が建て替え等をしておらずセットバックが未了なのでしょう。対して電柱の手前側、凹んでいるのはセットバック済の土地です。このように少し狭い路地に入ったときに、凸凹としているのを見かけたら、恐らくそこは2項道路だと推測されます。

1項1号と同様に、2項道路だった場合にも追加調査が必要なので補足しておきます。ただ1項1号と大きく違うのは、2項道路は基本的に私道で役所が管理していないということです。1項1号の道路が載っていた図面に2項道路は載っていませんので、そこから幅員等を調べることはできません。したがって、役所で調べる項目も1項1号とは違ってきます。

2項道路の追加調査項目

  • セットバック済か、未了か?
  • (未了な場合)狭あい協議は完了しているか?
  • セットバックの後退線はどこか?

2項道路の追加調査については、恐らく1項1号の追加調査をする窓口の近くですが、近いだけで違う窓口なことが多いです。道路種別を確認したときに「2項道路の調査ってどこですか?」と聞いてしまうのが早いと思います。

担当の窓口についたら、まず確認すべきは「セットバック済か、未了か?」です。もし済んでいれば問題ないですし、未了であれば次は「狭あい協議は完了しているか?」を確認します。

狭あい協議とは、セットバックの起点となる道路中心線の位置や、セットバック部分の整備方法役所側が買い取るのかなど、セットバックに関するあれこれを事前に協議して決めるものです。セットバックが未了であっても、狭あい協議までは終わっていれば、あとは決定事項に従って後退するだけですので比較的シンプルにことが運びます。どこから何m後退すればよいのかなど、今後の対応について教えてもらいましょう。

もしも協議が終わっていない場合は、後退位置についてどのように考えるべきか(たぶん現況道路の中心線から2mは確保して建築計画を建ててくださいと言われることが多いと思いますが)、今後はどのように手続きを進めればよいかを確認しましょう。


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セットバックと一方後退

2項道路は通常、お向かいさんと協力しあってお互いに道路中心線から同じ距離を後退します。これをセットバックと呼びますが、実はこれが成立せず自分だけが後退するパターンが存在しています。

それはお向かいさんがおらず、物理的に後退しようがないなどに面している場合です。崖も川も、セットバックをしてもらうのは無理でしょうからこうした場合、反対側の道路端から4mに足りない分すべてを自分が後退する必要があります。この相手方のいない後退を「一方後退」と呼び、セットバックとは区別されています。

参考画像:世田谷区「建築ガイド 4-1 道路と敷地の関係 P15より抜粋」

2項道路の怖い話

2項道路には怖い話がいくつかありますが、定番を紹介しておきたいと思います。

現況幅員が4m以上あった
既にセットバック済だと喜び、売却した。
油断していたが、後でセットバックが必要だとわかった

現況幅員が4m以上あったのでセットバック済だと判断し、役所への確認を怠った事例です。たしかに現況は4m以上ありましたが、実は道路中心線が現況道路の中心でなく調査地側に0.5m寄った位置にあり、ずれていた0.5m分の後退が必要だったことが後でわかりました。

結果、当初の想定よりも土地が狭くなり、建築できる建物も小さくなりました。これは揉めます・・・。現況幅員が4m以上であったとしても、2項道路は道路中心線から2m後退しなけばなりません。現況が4mだからと安心せず、あくまで道路中心線はどこで中心線から2mの範囲に敷地が被っていないかを確認するべきでした。やはり調査はしつこいくらいが丁度いいものです。

2項道路のなりたち

2項道路については、42条ができた当時を振り返ると理解が進む部分がありますので触れておきたいと思います。

話は昭和25年にさかのぼります。当時は戦後間もなく道路網のレベルはひどいものでした。42条の施行までは現在のような接道義務はなかったので、道路の質はバラバラ、4m未満の狭い路地なんてそこら中にあったはずです。そんな状況で無理矢理すべての道路に42条を適用するのは現実的ではありません。4mより狭い路地がまとめて再建不になってしまいます。

そこで42条の施行時点で道路をいくつかのパターンにわけて救済措置を設けることにしました。42条の施行時点で既に存在しており役所が認知している道については、幅員4m以上であれば当然に道路と認めるし、4m未満でも1.8m以上であれば道路とみなす。この特例で生まれたのが2項道路なのです。

(ちなみに、この時点で4m以上あった道路の内、市道・区道・県道・都道・国道といった公道は1項1号に、それ以外は1項3号(既存道路)になりました。)

さて、どの道路を2項道路にするのか、指定するのは役所の仕事でしたが、役所側も事前に全ての道を把握できているわけではありません。「1.8m以上 4m未満」という条件を満たしていても、役所が認知できていない道は指定されなかったのです。

では指定されなかった道路はどうなるかというと、そのままでは施行時点には存在していなかった扱いで認定外のままなので建築基準法による認定を受ける必要があります。方法としては、役所に対して42条の施行当時に存在していたこと証明し2項道路にしてもらう、または新しくできた道路として1項5号(位置指定道路)の指定を受けるなどが考えられます。

ちなみに前者の2項道路にしてもらう手続きはそれなりに大変で、あまり知られていないかもしれません。仲介担当者のみでは難易度が高いので、土地家屋調査士等の先生にご相談なさったほうが良いでしょう。

1項5号については次項で詳しく解説しますが、ざっくりといえば新しくできた道が基準を満たすものであれば道路として認めるという道路の審査制度です。古く狭い道路への救済策だった2項と比較すると、新しくできる道路に求める基準を定めているものなので、それなりに厳しい内容になっています。

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監修者

宅地建物取引士・公取協認定不動産広告管理者
野村 道太郎

大手不動産会社、不動産専門 広告代理店を経て現在は『不動産会社のミカタ』『役所調査のミカタ』の編集長を兼務。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

※実績等:初心者向けセミナー「よくわかる役所調査」受講者アンケート結果:満足度96.3%、全国3,000社が利用した「役所調査チェックシート」企画・制作、業務効率化ツール「スマホで役所調査メモ」企画・設計・監修 など

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