建築確認・検査済証 – 役所調査マニュアル[実践編]

ここからは建築確認・検査済証について解説します。といっても、制度の概要については「入門編」で触れていますし、調査時の重要資料である建築計画概要書がここまでに何度も登場していたり、大まかな調査方法も建築基準法の「緩和措置」の中で触れていたりと、基本的な部分の多くは既出であったりします。

何となくのイメージは既についておられるかもしれませんが「調査時には何を確認しなければならないか」「どのように調べるのか」といった具体的な部分についてはカバーしきれていない部分がありますので、補完していきたいと思います。

監修者

宅地建物取引士・公取協認定不動産広告管理者
野村 道太郎

大手不動産会社、広告代理店を経て現在は『不動産会社のミカタ』 『役所調査のミカタ』の編集長を兼務。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

監修者

宅地建物取引士
公取協認定不動産広告管理者

野村 道太郎(プロフィール)

台帳記載事項証明

建築確認に関連する情報の調査をする目的は既存建築物の遵法性を確認することです。なので、最も重要なのはやはり下記の2点になるでしょう。

  • 建築確認済証の有無
  • 検査済証の有無

① ② どちらも存在を確認できれば建築当時は遵法性が確保されていたことがわかります。

そしてこれらを確認するためには台帳記載事項証明という書類を取得してください。建築指導課など建築確認制度を管轄する窓口で取得できるはずで、窓口に設置されたパソコン等からセルフで出力できる場合もありますが、まだまだ「窓口で取得」という役所が多いと思います。その場合、申請書に物件を特定するための情報(建築年月日、敷地面積、延床面積、構造、用途、建築主 等)を記入して提出する必要があるので、登記情報や取得当時の情報が記載されたカタログなどがあると捗ります。

ちなみに、初めて行く役所でなければこの申請書は1枚持ち帰っておき、コピーを事務所に保管しておくことをおすすめします。役所より事務所で書いたほうが楽ですし、会社の方針にもよるかと思いますが社名・所在地といった情報は、会社のゴム印で済ませられることもあるでしょう。私の場合は社名や住所、担当者名といった物件に左右されない項目は事前に記入済のものをコピーして保管しておくようにしていました。

さて、そろそろ書類の中身に触れていきたいと思います。台帳記載事項証明には確認済証と検査済証の交付記録が記載されます。まず取得ができるか、そして取得ができたら確認済証・検査済証について記載されているかを確認します。役所によって若干書式が異なりますが、基本的に書いてある情報はほぼ変わりません。下記にサンプル画像を用意しました。

港区で取得したもの
都庁で取得したもの

建築当時に確認済証・検査済証を取得していれば、それぞれの欄に交付(発行)年月日・番号が記載されているはずです。これらの情報は重説にも記載が必要になる重要な情報ですので確認をしていきます。

もしも確認済証は記載があるのに検査済証の欄だけが空欄であれば、建築完了時に検査を受けていない違反建築である可能性が疑われます。原因としては様々なパターンがありますので詳しく調べていく必要がありますが、よくあるのは容積率オーバー用途変更(居室でなかったはずの部分を居室にしてしまった)などですので、ひとまずは当時の法規制下における容積率と現状の容積率を比較してみると良いでしょう。

ちなみに台帳記載事項証明は1枚だけとは限りません。特にマンションの場合に多いのですが、昇降機(エレベーター等)を始めとする建築設備や、擁壁や看板、塔屋といった工作物の中には建築確認が必要なものがあり、調査対象物件にそういったものがあれば建物自体とは別に確認済証・検査済証が存在するはずだからです。物件に附属する建築設備・工作物についてはできれば事前に存在する可能性を確認しておきたいところですが、役所の窓口で「本物件には他に取得可能な台帳記載事項証明はありますか?」と聞くと調べてくれたり、むしろ向こうから「複数ありますがどこまで必要ですか?」と確認してくれることもあります。とはいえ、基本的には能動的に漏れのない調査をして頂きたいので窓口頼りにはしないようにしていただけたらと思います。

また、台帳記載事項証明が複数になるパターンは他にもあります。それは確認済証の発行後に計画変更をしている場合(壁や柱の位置を変えたい 等)です。軽微な変更以外は変更の度に確認申請が必要ですから、その都度、確認済証が発行されます。つまり、台帳記載事項証明も計画変更の回数に応じた枚数を取得できるのです。計画変更の確認済証は、当初の確認済証の番号末尾に「変2号」「変3号」と変更の度に番号が更新されていくような表記がされることが多いので、そういった表記をみたら計画変更があっただろうということがわかります。

ちなみに計画変更をした物件の場合、最後の確認済証が記載された台帳記載事項証明にのみ検査済証の記載があり、それまでのものには検査済証の記載はありません。検査済証はあくまで「確認申請の内容通りに、適法に建築を行ったか」を証明するものですので変更前の建築確認に対応した検査は行われませんので当然です。

少し話が飛びますが台帳記載事項証明は安くありません。役所によりますが300円、400円といった金額をよく目にします。1枚だけでの取得であればあまり問題ないと思いますが、大規模マンションでエレベーターも複数あり計画変更も「変8号」まであるといった場合であれば10枚以上取得しなければならない可能性が出てきます。となると一気に調査費は膨れ上がります。個人的には1物件で6,000円以上かかった経験もありますので、大規模マンションの調査時にはお財布の中身はやや潤沢にしておかれることをおすすめします。

また、所属される会社によっては「計画変更の台帳記載事項証明は不要、最終の検査済証が記載されているものだけでいい」ということもあるでしょう。その場合、必要な取得枚数は少なくなりますが、重説には全ての確認済証の交付(発行)年月日・番号を記載することが多いため、それらの情報は調査が必要です。調査方法は次に解説する建築計画概要書が取得できるのであれば第四面に書かれているはずですので取得するだけで調査完了となります。もしも概要書の取得ができない場合には「台帳記載事項証明」という名称の基になっている「台帳」を閲覧すれば確認できるはずなので、窓口で取得したい台帳記載事項証明だけを取得しながら「記載事項を確認したいので台帳の閲覧もさせてください」と伝えましょう。大体の場合でやたら分厚く重たい冊子が出てきて、大体の場合で手書きなので「これ読めないな・・・」という経験までがよくある一連の流れであったりします。

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監修者

宅地建物取引士・公取協認定不動産広告管理者
野村 道太郎

大手不動産会社、不動産専門 広告代理店を経て現在は『不動産会社のミカタ』『役所調査のミカタ』の編集長を兼務。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

※実績等:初心者向けセミナー「よくわかる役所調査」受講者アンケート結果:満足度96.3%、全国3,000社が利用した「役所調査チェックシート」企画・制作、業務効率化ツール「スマホで役所調査メモ」企画・設計・監修 など

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