1項5号(位置指定道路)
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介
新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介(プロフィール)
ここからは1項5号(位置指定道路)の解説です。前ページの説明文を再度引用しておきたいと思います。
ざっくりといえば新しくできた道が基準を満すものであれば道路として認めるという道路の審査制度です。
1項5号は役所ではなく一般の人や民間企業が道を作り、それを建築基準法による道路として認めてもらい道路となる制度です。見る機会が多いのは、不動産会社が広めの土地を分割して、複数の戸建てを一気に建売販売するような多棟現場で、基本形は以下の図のような、袋小路の入り口が三角状に開いている形状です。
こうした形になるのにはちゃんと理由があります。位置指定道路として認められるためには満たさなければならない基準があり、そのうちの1つに「道路の角部分には1辺2mとなる三角状のすみ切りを設ける」というものがあるのです。位置指定道路にするためにはすみ切りが必須なので、道路の入口部分が三角状に拡がった形状になっています。典型的な形状ですので歩いていると目にする機会も多いでしょう。
位置指定道路にはこのほかにも「35m超えたら行き止まりはダメ、でも車用の転回広場作ればOK」などいくつかのルールがありますが、役所調査時点ではあまり重要ではありません。まずは調査方法と確認項目を押さえてしまいましょう。
とはいえ、ここまでの道路と比較すると調査は超シンプルで、道路を管理する窓口で「位置指定図」を取得してください。以上です。
正直これ以上に確認することがあまりありません。本来であれば、位置指定の年月日と番号という情報も必要なのですが、位置指定図を取得したら書いてあります。ただ、位置指定図がものすごく古いと「筆書きで達筆すぎて読めない」という経験は私も何度かあります。位置指定図を取得したら、その場で必要な情報が読み取れるかは確認したほうが良いでしょう。ちなみに、どうしても読み取れなかったら窓口で相談すると教えてもらえるはずです。
マニュアルの趣旨とは外れてしまうため、ここではあまり詳しく触れませんが、位置指定道路の奥深さはどちらかというと現地での調査になると思います。位置指定道路は読んで字のごとく「位置の指定を受けた道路」です。そして位置指定図にはその詳細な位置・形状が記載されています。位置指定道路はこの図面通りの位置・形状でなければなりません。位置指定図を取得したら基本的には現地で図面と現況に差がないかを確認する必要があるのです。もしも何か図面と違っている事があれば、原則として位置指定図のとおりに復元しなければ建築許可がおりないので注意が必要です。
1項5号と1項1号
1項5号は完成後に役所へ寄付されて公道になることも多いです。そうなると、位置指定道路はそもそも幅員4m以上なはずですし、寄付することで官有地となるため、基本的にそのまま1項1号に成り上がります。
ただ注意が必要なのは、1項1号になっただけでは位置指定が消滅するわけではないという点です。「1項1号でもあるし、1項5号でもある」という不思議な状況になってしまうのです。この場合にありえるリスクとしては、現況が位置指定と異なっていた場合に、前述の復元義務が発生してしまう可能性があります。
個人的には、せっかく1項1号なのに位置指定の亡霊が取り憑いているイメージで捉えています。本来であれば寄付する時点で位置指定道路の廃止(廃道)手続きをして除霊まで済ませておくべきなのですが、それがなにかの理由でされなかった場合にこうしたことが起きてしまいます。該当した場合には面倒ですが役所に相談しながら指示に従うしかありません。
1項5号と1項2号
実は1項5号に少し似た道路があります。それは1項2号(開発道路)なのですが、1項2号は開発行為により造成される道路なので、一言でいうと1項5号よりもでかいです。
そもそも開発行為とは三大都市圏では500㎡(それ以外の地域では1,000㎡)以上の宅地造成を指していますので、1項2項という時点で500㎡以上の規模感になります。さらに、開発道路の幅員は一部特例で4mの場合もありますが原則6m以上にする必要があります。全体的にでかいのです。
なので、比較的小規模な多棟現場によくある1項5号と、大きな開発で造成される1項2号と、何となくの大きさで捉えておくとよいでしょう。ちなみに、1項2号も1項5号と同様に、造成後は役所に寄付され公道に、つまり「1項1号になる」ことが多いので、実際の調査で見かけることはそこまで多くはないと思いますが、見かけた場合には位置指定図ではなく開発登録簿という資料を取得して調査を行います。1項5号は位置指定図、1項2号は開発登録簿、とりあえずはこれだけ覚えておいてください。
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介
新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。