道路 – 役所調査マニュアル[実践編]

接道条件・道路付け(43条)

監修者

宅地建物取引士
荒川 竜介

新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

監修者

宅地建物取引士

荒川 竜介(プロフィール)

ここまでは建築基準法の42条を中心に「建築基準法による道路とは?」という道路の定義を解説してきました。ここからは43条で定められている敷地と道路の関係について整理していきます。改めて接道義務について掘り下げていきますので、このあたりで接道義務のポイントを振り返っておきましょう。

  1.  建築基準法による道路か?
  2.  2m以上接しているか?

ここまでの解説をふまえると、実は①は「42条で定められた条件を満たした道路か?」という話をしていたことがわかります。同様に実は②では43条の話をしていて、条文を見ると法律文にしては意外なほどシンプルにそのまま書かれています。

(敷地等と道路との関係)
第四十三条 建築物の敷地は、道路
(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。

※以下略

-建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)令和5年4月1日施行-

(ちなみに土地が道路に接する部分の幅を「接道の長さ」「接道幅」などとそのまま呼ぶこともあれば「間口 まぐち」と呼ぶこともあります。いずれも実務の中で普通に用いられる表現ですので覚えておいてください。)

なぜこうした規定があるのかというと、建築基準法の大きな目的に「防災」があり、特に火災対策を強く意識しているためです。実はこれまでに学んだ建築制限の中にも火災対策を根拠にするものはいくつかあり、例えば防火規制はわかりやすく「燃えにくくしたい」という意図ですが、建蔽率斜線制限には建物の周囲に空間を確保することで「延焼を防ぎたい」といった意図が含まれています。

そして2m以上の接道を義務付けているのは、災害時に避難や救助をしやすくするためです。単純に住民が避難しやすいようにということもありますが、救急車の車幅は約1.9m、消防車も小型のポンプ車であれば約1.9mのものがありますので緊急車両の出入りを可能にする最低限の幅という側面もあります。

調査時の注意点

さて、①の調査では道路種別を確認したり、道路種別ごとに追加調査が必要になったりと役所での確認事項が多くありました。対して②の調査については、①ほど役所での調査項目は多くありません。というより役所で確認できることには限りがあるといったほうがいいかもしれません。本来ここで確認したいのは「調査物件はちゃんと2m接道しているのか?」という点ですが、これは各種の参考資料を用意してから、現地で確認するべきことのほうが多いのです。

役所で確認できる範囲としては、建築計画概要書が残っていれば既存建物の建築時の接道状況が読み取れますので、非常に参考にはなります。また、道路種別によっては現況平面図などの各種資料から接道状況を推測することも可能です。ただいずれの資料も作成時点の情報になりますので最終的には現地で資料と現況に相違はないか接道に必要な要件を満たしているかといったところを確認し「問題なく接道している」という結論を得る作業が必要です。

確認の結果、判断に迷うことや参考資料と違っている点などが見つかった場合には、状況を詳しく記録しましょう。そして再度役所を訪れ、担当者に状況を報告のうえ見解をきく必要があります。今までにお伝えした中で特に注意が必要なのは「2項道路のセットバック状況」と「1項5号が位置指定図通りか?」という2パターンです。いずれも、状況次第では土地を後退させたり、道路部分の整備が必要になったりなど、影響が大きいものですので、役所での調査のみで完結させず、慎重に現地を確認しなければなりません。また、ここまでに挙がっていないケースで、特に注意が必要なものがありますので以下にて解説していきます。

旗竿地・路地状敷地・敷地延長

接道を語る上で外せないのが旗竿地路地状敷地敷地延長などと呼ばれる土地です。地方によっても呼び方が違っており、延長敷地、専用通路といった呼ばれ方もあるようですが、ご自身のエリアでの呼び名は先輩方にご確認いただければと思います。イメージとしては最初の「旗竿地」が1番わかりやすいのではないでしょうか。下記画像の水色やオレンジで示される土地のように「」のような形状をした土地のことをこのように呼んでいます。

こうした土地は特に間口の確認が重要です。まず道路に接している幅が2m以上であるかは当然ですが、そこから土地まで伸びた細長い通路部分(建築用語で路地状部分と呼びます)全体が2m以上の幅である必要があります。一部がくびれて2m未満になっている場合は接道義務を満たしていないことになるのです。

よく役所で用いられる表現に「直径2mの球体を転がして敷地に到達するか」という例えがあります。少しでも狭い箇所があり引っかかってしまったらダメという例えなのですが、球体ですと足元に空間のゆとりができてしまうので「底面の直径が2mの円柱を傾けずに搬入できるか」という方が厳密でしょう。

中には測量図上では幅員2mを確保できていても、境界線上に塀を作ってしまっていて塀の厚さ分だけ幅員が足りずに接道義務を満たせないような事例もありますので、調査物件の路地状部分が2mギリギリの場合は必ず現地で実際の幅員を確認するようにしましょう。ちなみに、この「塀やフェンスなどの厚み」をどう扱うかは役所によっても見解が異なることがあり、「測量図上で2mの幅員が確保できているのであれば塀やフェンス等の工作物の厚みによって2mに満たなくとも問題ない」とすることもあれば「有効幅員でしっかり2m確保できなければ認めない」ということもあります。測量図と現地の状況を確認し、不安な点は必ず管轄する役所の窓口で確認を取るようにしてください。

路地状部分と隅切りに関する制限

路地状部分の長さ幅員については条例による制限受けることがあり、都道府県によって規定が異なりますので注意が必要です。例えば東京都では長さ20m以下であれば必要な幅員は通常通り「2m以上」ですが、長さ20mを超える場合には3m以上の幅員が必要になります。(東京都建築安全条例 第3条)

ご自身の担当する地域では路地状部分に関する条例はどういった内容なのか、これは早い段階で確認しておくようにしてください。

また、路地状部分に関する規定を定めている条例では、角地の隅切りについても定めていることが多いので併せて把握しておくと良いでしょう。隅切り条例と呼ばれるもので「角地で前面道路が6m未満の場合には、敷地の角部分に隅切りが必要」といった内容になっています。路地状部分隅切りに関しては、条件に当てはまってしまえば制限を受けますので、やはり事前に条例を把握しておくことが重要です。

それぞれの条件を把握しておき、調査時に「今回の物件はあてはまりそうだ」と思った場合には建築指導課で「恐らく隅切り条例に該当すると思うので確認させてください」といったように伝え「実際に該当するかどうか」該当する場合には「どのような制限を受けるか」を確認するようにしましょう。

なぜ旗竿地ができるのか?

役所調査と直接は関係ありませんが、旗竿地ができる理由に少し触れておきます。土地が大きすぎる場合に、土地を分割して程よい大きさにすることがあります。そうしたときに、道路に接している長さが充分であれば土地を真っ二つに割ればいいだけなので簡単ですが、接道幅が狭い土地だとそうはいきません。縦に真っ二つに割れば細すぎて使いにくい土地になりますし、横に割れば奥の土地は未接道になってしまいます。

なので接道幅が狭い土地を分割するときには、旗竿地を作ると都合が良いのです。やり方は様々ですが見る機会の多いパターンをいくつか下記に図示してみます。それぞれ、私が聞いたことがある通称を添えていますが、特に正式な呼び方があるといったものではないので、皆さんの地域では呼び方が違うかもしれません。呼び方についてはあくまで参考例として見ていただければ幸いです。

不動産用語に「道路付け」というものがあります。これは接道条件の良し悪しを語る際に使うことが多い業界用語で、不動産会社同士での会話では普通に出てくるので覚えておいて損はありません。

例えば上記の図には「奥まった旗竿地」と「手前側の整形地」がありますが、整形地は接道幅も広くしっかりと接道しています。こうした接道条件が良い土地を「道路付けが良い」というのです。逆に旗竿地は少ししか道路に接していませんから「道路付けが悪い」とか「弱い」といった表現がなされます。ちなみに、道路付けの良し悪しは接道幅だけでなく前面道路の種別や現況なども加味して総合的に判断をします。極端な例ですが、いくら整形地でも接しているのが認定外道路であれば道路付けは「最悪」ということになるでしょう。

監修者

宅地建物取引士
荒川 竜介

新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

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