大規模・タワーマンションの緩和措置
ここでは規模の大きな建物で見る機会のあるものをいくつかご紹介します。そこまで頻繁に目にするものではないですが、都市部の大規模マンションやタワーマンションではよく用いられるものですので、そういった物件を扱う機会がある方であれば知っておいて損はありません。
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介
新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介(プロフィール)
総合設計制度
総合設計制度は、敷地が広いタワーマンションなどで見る機会が多い制度で、建築基準法では「敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例」と表記されていています。敷地の一部を「公開空地」といって周辺住民も出入りできるようなオープンスペースにして「周辺の環境向上に貢献する代わりに、特別に緩和措置を受けられる」という交換条件のような仕組みになっています。緩和可能なのは容積率・絶対高さ・斜線制限で、通常よりも大きく高さのある建物を建築できるようになります。
役所調査においては、概要書があれば「総合設計制度」という表記があり確認できるはずです。仮に概要書がない場合にはここまでに出てきた緩和措置では説明のつかない容積率・高さだった場合に、制度利用を疑うことになりますが、現地に「公開空地」があるかなども判断材料になりますし、公開空地については分譲時のパンフレットや管理規約に記載されている可能性が高いのでこうした資料も併せて確認すると良いでしょう。
一団地認定
「総合的設計制度」と呼ばれることがあり、1つ前の総合設計制度と非常に紛らわしいのですが異なる規定です。「団地」という文字列からイメージをふくらませるのが1番わかりやすいですね。広い敷地の中に複数の建物を建てるときに使う制度ですので、まさに団地や、複数棟あるような大規模マンションの建築時に用いられます。
通常、建築基準法では「1つの敷地には1つの建物」という原則がありますが、一団地認定を受けることで敷地内に複数の建物を建てることができるようになります。これにより広大だが1面しか接道していない土地などでも、道路から離れた位置に棟を配置できるようになったり、隣地との兼ね合いで影響を受ける斜線制限などもゆるくなったりと恩恵が大きいのです。
緩和できる制限は接道義務、建蔽率、容積率、日影規制等で、総合設計制度と同様に概要書や分譲時パンフレット、管理規約などから読み取ることができます。しかし、1つの敷地に複数棟あればすぐにわかると思いますので、比較的確認のしやすい制度です。
天空率による特例(建築基準法第56条第7項の規定)
天空率とは、平成15年に追加された制度で斜線制限の緩和措置です。言葉での説明がとにかく難しいので港区の資料をお借りします。
厳密に言うと若干違うのですがイメージとしては「決められた観測点から魚眼レンズで建物を見たときに、建物が画面上を専有している面積が、斜線制限を適用した建物(図 Ab1)よりも、狭い範囲で収まる建物(図 Ab2)であれば、斜線制限を無視していい」という制度です。
今までは斜線制限によって、どうしても建物の上部を斜めに切り落とす必要があることが多くありました。しかし天空率の採用により、斜線制限を無視して建築が可能になったので、図のように形の整った建物をより高く建てることができるようになりました。
冒頭に書いたように天空率は平成15年以降の建築物に活用されています。比較的新しい制度なため恐らく概要書の閲覧ができるはずで、確認に苦戦することはないでしょう。しかし「天空率」とは表記されず下記の図のように「建築基準法第56条第7項の規定による特例の有無」といったような記載になっていることが多いです。「56条7項=天空率」ということだけ覚えておくと概要書での確認がしやすくなります。
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介
新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。