建築基準法 – 役所調査マニュアル[実践編]

高度地区

監修者

宅地建物取引士・公取協認定不動産広告管理者
野村 道太郎

大手不動産会社、広告代理店を経て現在は『不動産会社のミカタ』 『役所調査のミカタ』の編集長を兼務。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

監修者

宅地建物取引士
公取協認定不動産広告管理者

野村 道太郎(プロフィール)

高度地区は、建物の高さの限度を決めるものです。市区町村ごとに様々なパターンがありますが大きな方向性は2つで、地域の住み心地を守るために「◯mまでの高さしか建てられません」という最高限度を設けるか、街として発展させるために「最低でも◯m以上の高さにしてください」という最低限度を設けるかです。

基本的に「第◯種高度地区」といった表記をされ、◯の中には数字が入ります。第1種高度地区、第2種高度地区のようなイメージです。何種まであるかは市区町村ごとに違っており、東京ですと3種ですし、千葉市は2種まで、横浜市はかなり細かく最高限度7種、最低限度3種が定められています。

そして高度地区では単純に「◯mまで」といった水平的な高さだけを決めるだけでなく、北側のお隣さんの日当たりを確保するために、土地の北側に対し斜線制限を設ける場合があります。ちょっと言葉での説明が難しいので品川区の資料をお借りしたいと思います。

[参考画像:品川区 建築のてびき

図の中で、土地の北側が斜めに切り落とされているのが斜線制限です。建物を建てるときにはこの斜線を超えてはならず、こうすることでお隣の日当たりが確保されるようになります。斜線制限を知ってから近所を歩くと、周りの建物の北側が実は斜めになっているのに気付くはずです。ぜひ「あ、あれは斜線制限か」とつぶやいて不動産屋さんっぽい空気を出してみましょう。

絶対高さと最高高さ

高度地区を調べていくとよく「10m第1種」とか「31m第3種」とか、先頭に高さが表記されているものを目にしますが、これらは基本的に最高限度を表しています。「10m第1種」は「10mまでしか建ててはいけない第1種高度地区」ということですね。こうした高さの限度は「絶対高さ」または「最高高さ」などと呼ばれます。

しかし「絶対高さ」という呼び方をする場合、一般的には少し限定的な制限を指していることが多いので補足しておきたいと思います。具体的には建築基準法第55条のことで「1低層・2低層・田園住居地域において、建物高さは10mか12mのどちらかを最高限度にしなければならない」という規定で高度地区とは別の制限です。記載した低層住居系の3用途はいずれも閑静な住宅街を前提にしていますので、高い建物を作らず落ち着いた住環境を維持したいという意図です。単に「絶対高さ」という場合には、この低層住居系の用途だった場合に設定しなければならない高さ制限(55条)を指していることが多いので覚えておくとよいでしょう。

ちなみに、高さの最高限度は先程の低層住居系 3用途以外でも定めることができますが、その場合には高度地区により制限を設けます。低層住居系の用途では「絶対高さ」を決めておかなければなりませんでしたが、高度地区の設定は任意ですからあったりなかったりします。

そして、この高度地区により任意で定める高さの限度は「最高高さ」や「最高限度」などと呼ぶことが多いのですが、市区町村によっては「絶対高さ」と呼ぶことがあります。つまり「絶対高さ=10mか12m」とも言えないため注意が必要なわけです。

身も蓋もありませんが、ここまでを踏まえ「絶対」なのか「最高」なのか、これらの呼び方はあまり気にしないほうがよいです。いずれにしても最高限度を指していて、低層住居系の用途だったら絶対に10mか12mの制限があるはず、というポイントをしっかり押さえましょう。

高度地区の調査をまとめます。確認事項は下記の通りです。

  • まずは高度地区の指定があるかないか
  • ある場合は第何種か
  • 低層住居系の用途は絶対高さの確認が必須(10mか12mか)

ちなみに高度地区は市区町村ごとに詳細な規定が異なるからか、説明用の資料を用意している市区町村が多いので、資料があれば受け取ってしまうのが手っ取り早いです。

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監修者

宅地建物取引士・公取協認定不動産広告管理者
野村 道太郎

大手不動産会社、不動産専門 広告代理店を経て現在は『不動産会社のミカタ』『役所調査のミカタ』の編集長を兼務。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

※実績等:初心者向けセミナー「よくわかる役所調査」受講者アンケート結果:満足度96.3%、全国3,000社が利用した「役所調査チェックシート」企画・制作、業務効率化ツール「スマホで役所調査メモ」企画・設計・監修 など

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