建蔽率・容積率
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介
新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介(プロフィール)
建蔽率と容積率はいずれも建物の大きさに対する制限で「◯%」といった割合で示されます。用途地域ごとに基準となる数値が指定されているので、用途地域と同時に調査できるはずで、実際に用途地域の説明で使用した画像を見ると書いてあります。
それぞれの用途地域が記載された円の上下に数字があり、これがそのまま各地域の建蔽率・容積率を示しています。参考画像に記載された各地域の数値をまとめると以下の通りです。
- 商業 :建蔽率80%、容積率600%
- 二中高:建蔽率60%、容積率300%
- 一住 :建蔽率60%、容積率400%
建蔽率・容積率の調査はひとまず「調査地は何%なのか?」を最優先で確認してください。ちなみにこの地域ごとに指定された数値を「指定建蔽率」「指定容積率」といい、建物を建てるときにはこの数値を超えてはならない上限値となります。
ちなみに建蔽率・容積率は突き詰めると複雑で面倒ではあるのですが「役所調査の時点で確実に押さえておくべき必須情報」というとかなりシンプルで、以下の3点になります。
- 指定建蔽率
- 指定容積率
- 容積率低減係数
建蔽率
建蔽率とは土地全体の面積(敷地面積)に対して建物が建築される面積(建築面積)の割合を指しており、100㎡の土地のうち60㎡の範囲に建物が建っていれば建蔽率は60%になります。
建築面積というとちょっとイメージがつきにくいかもしれませんが、乱暴にいえば物件を真上から見下ろして土地が建物で隠れる範囲が、ほぼほぼ建築面積と言えます(軒先1mまでは計上しないとか細かな規定があるので厳密には正しくない表現です)。あくまで平面的なもので、土地の範囲を超えて建物は建てられませんから100%を超えることはありません。
ちなみに建蔽率は、建物の採光や通風を確保するという目的や、火災時に延焼しにくいようにといった目的から敷地内に空地を確保するために定められています。
容積率
次は容積率についてです。建蔽率と容積率の大きな違いは建蔽率 = 平面、容積率 = 立体という点です。分母は建蔽率と同じ「敷地面積」ですが分子が異なっており、建物全体の床面積を合計した「延床面積」を参照します。建物が2階建てで1階も2階も50㎡の場合は延床面積は100㎡となりますので、土地が100㎡だとすると容積率は100%になります。
容積率には、建物の立体的な大きさを制限することで、その地域を利用する人口を制限する意図があります。道路や下水道などの公共インフラには対応できる人口に限界が存在しますから、想定外のキャパオーバーがおきないようにするのです。容積率を定めれば将来的に必要になるインフラの最大規模も予測することができますから、必要な場所に必要な規模のインフラを整備していくという合理的な開発を計画するのにも役立ちます。
ちなみに参考画像で示した用途地域はそれなりに大きな数値でしたが、制限の厳しい一低層などではもっと小さくなります。建蔽率40%・容積率80%という地域ですと、土地が100㎡だった場合、建物の1階・2階を40㎡ずつにすると容積率が上限である80%に達します。基本的には2階建ての一戸建てを前提とした建築制限ですね。余談ですが業界用語で、建蔽率40%・容積率80%の地域を「ヨンパチ」、建蔽率50%・容積率100%の地域を「ゴットー」と呼ぶことがありますので覚えておくと良いでしょう。
算定容積率と容積率低減係数
容積率には地域ごとに定められる上限値である指定容積率だけでなく、もう一つの上限規定が存在しています。「算定容積率」と呼ばれ、調査地の前面道路が幅員12m以下の場合に適用されるもので、指定容積率と比較してより数字が低い(厳しい)数値がその敷地の上限として適用されます。なお、調査地が2本以上の道路に接している場合には、より広いほうの道路を基準にしてよいことになっています。
算定容積率の計算には「前面道路の幅員」と「容積率低減係数」という数値を用います。容積率低減係数というのは4/10、6/10、8/10(0.4、0.6、0.8)のいずれかが用途地域ごとに指定されているもので、低層住居系であれば0.4になりますが、それ以外の地域では市区町村によってまちまちなので確認が必要です。
計算式は「前面道路の幅員 × 容積率低減係数 × 100%」です。仮に前面道路の幅員が4mで低減係数0.4の地域ならば「4m×0.4×100%=160%」という計算になります。指定容積率が80%の地域であれば、80%のほうが低いのでそのまま指定容積率が適用されますが、指定容積率が200%の地域では、計算で求めた160%のほうが低いので、指定容積率でなく160%の算定容積率がその敷地の上限となります。
この前面道路幅員による容積率の制限については、あまりイメージがついていない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、先だってお伝えした容積率の意図を思い出せば意外とすんなりと納得がいくものです。容積率の意図は「人口を制限し、インフラのキャパオーバーを防ぐ」でした。インフラのキャパシティとはつまり上下水道管の太さとも言えますから、狭い道路しか通っていない地域ですと、当然に道路配管の管径が細くなってしまい給水量・排水量も制限されてしまいます。したがって「狭い道路しかない=細い上下水道しか通せない」という地域に対しては、地域一帯に定められた指定容積率とは別に道路幅員による容積率制限が必要なのです。
ちなみにもう少し単純な理由も存在しています。建築基準法の立法趣旨の中でも特に重視されているのは「防災」、さらに言えば「火災対策」です。大きな建物で火災が発生した場合には被害も規模に比例して大きくなる恐れがあります。そんな場合に建物正面に狭い道路しか通っていなければ、消防車や救急車の救助活動に支障が出てしまうかもしれません。防災の視点から見れば「道路が狭い」というのは非常に大きなリスクとされており、こうした「救助活動への対応能力」は道路というインフラに求められる基本性能であって、絶対にキャパオーバーをするわけにはいかない部分です。
こうした諸々の理由から、道路が狭い場合には容積率への制限が必要不可欠なのです。
※道路は防災上、非常に重要なインフラであることがわかると、意図が見えてくる制限は他にもありますので覚えておいて損はありません。(代表的なところでは「接道義務」も防災を強く意識した制限になっています。)
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介
新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。