建築基準法 – 役所調査マニュアル[実践編]

斜線制限

監修者

宅地建物取引士・公取協認定不動産広告管理者
野村 道太郎

大手不動産会社、広告代理店を経て現在は『不動産会社のミカタ』 『役所調査のミカタ』の編集長を兼務。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

監修者

宅地建物取引士
公取協認定不動産広告管理者

野村 道太郎(プロフィール)

斜線制限は建物の高さに対する制限の一種です。3種類ありますが、どれも敷地や道路の通風・日照・採光確保を目的にしており、起点となる位置から決められた角度・距離で斜線をひいて、その斜線を超えて建物は建てられないという決まりです。

完璧に理解しようとするとかなり難しいのですが調査自体はシンプルで、基本的に制限の有無が用途地域ごとに決まっています。しかも制限の内容もある程度決まった型があり、高度地区のように「市区町村ごとに詳細が異なる」ということもありません。用途地域を確認した時点で、制限の有無も内容もほとんどがわかってしまうので、わざわざ追加で確認すべきことがあまりないのです。ただ、稀に何かしらの地域・地区・街区や条例の影響で、特例的に適用・非適用になっているようなこともありますので、そういった特例の有無だけは気をつけておきましょう。

確認事項が少ないとはいえ、概要は把握しておかなければ調査も捗りませんのでざっくりと解説はしておきたいと思います。まず斜線制限は下記3種です。

  1. 道路斜線制限
  2. 隣地斜線制限
  3. 北側斜線制限

① 道路斜線制限は、物件が面する道路の境界線を起点としますが、物件が接する側でなくお向かいさん側から斜線をひきます。なぜ反対側なのかというと、道路の幅員が広ければその時点である程度の空間が生まれ、通風・日照・採光が確保されますから「幅員が広いなら制限を緩くする」という意図です。道路はインフラの基礎であり、非常に重要度が高いものですので全ての用途地域に設定されます。

参考画像:世田谷区「建築ガイド 4-7 建築物の高さの制限」

② 隣地斜線制限は、隣地との境界線を起点に、その上空20mか31mの高さから斜線をひきます。そもそもに起点の位置が高いので、絶対高さ制限によって12mよりも高い建物が建てられない低層住居系の用途地域では適用されません。

参考画像:世田谷区「建築ガイド 4-7 建築物の高さの制限」

③ 北側斜線制限は、高度地区でもほぼ同じ名称が出てきましたね。基本的な考え方は同じです。北側のお隣さんの日当りが悪くならないよう、敷地の北側から斜線をひきます。「日当り」という住環境のための制限ですから人が住んでいる地域を前提としており、田園住居を含む低層系~中高層の住居専用地域にのみ適用されます。

ただ、1中高と2中高の中には、次項で紹介する日影規制が適用される地域があります。その場合、北側斜線よりも日影規制のほうが厳しいため、北側斜線は非適用となりますので注意が必要です。以下に斜線規制と用途地域の関係性を表にまとめました。

ちなみに、ここでいう③ 北側斜線制限高度地区によって定められる北側斜線は、似ていますが根拠となる建築基準法が違うので別物です。(③=56条、高度地区=58条)

しかし、調査時点ではあまり重要ではないので細かく覚えなくても大丈夫です。
一応違いをざっくりまとめておくと、③ 北側斜線制限は住居専用地域なら適用されるもので、用途地域によって「型」が決まっているので制限の詳細は調べなくても大丈夫です。対して高度地区は、それ自体がどこに設定するか任意の制度ですし、内容も市区町村によってまちまちなので、都度調査が必要です。

また、高度地区は任意であるところを「わざわざ制限する」わけですから、多くの場合で③よりも厳しい制限になっています。斜線制限については、いくつかの規制緩和措置が存在していますが「③は緩和できるが、高度地区は緩和できない」というものがあったりします(天空率)。なぜそのようなことが起きるのかというと、このように似ていても厳しさが違うためだと考えると整理がしやすくなります。

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監修者

宅地建物取引士・公取協認定不動産広告管理者
野村 道太郎

大手不動産会社、不動産専門 広告代理店を経て現在は『不動産会社のミカタ』『役所調査のミカタ』の編集長を兼務。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

※実績等:初心者向けセミナー「よくわかる役所調査」受講者アンケート結果:満足度96.3%、全国3,000社が利用した「役所調査チェックシート」企画・制作、業務効率化ツール「スマホで役所調査メモ」企画・設計・監修 など

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