日影規制
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介
新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介(プロフィール)
日影規制も斜線制限同様に「難しいけど調査はシンプル」な高さの制限です。物件周辺の日照を著しく損なうことがないよう、「お隣さんの敷地に日影を作っていいのは◯時間まで」と時間まで明確に区切って制限を受けます。詳細よりも、まずは書式を覚えましょう。
多少書き方が違うこともありますが要素は変わりません。2つの時間(◯h-△h)と高さ(◆m)という3要素で構成されます。もうはるか昔になってしまいましたが、入門編で紹介した呪文の末尾「3時間2時間、1.5m」と書かれていたものがまさに日影規制の表記です。
多くの場合、用途地域と同じ窓口で確認ができ、日影規制がある地域であれば、用途地域の確認をした流れで一緒に教えてくれます。役所の窓口担当者がどんなに無愛想でも2つの時間と高さを伝えられたら日影規制だと思いましょう。正直、調査だけが目的であれば書式だけ覚えておき、メモをとることができれば問題ありません。しかし、念のため制度の中身も簡単に解説をしておきます。
日影規制の基本的な考え方は「決められた基準よりも長い時間、隣地に日影を作ってはいけない」というものです。ただ、日影ができる時間というのは季節等によって異なりますから、前提条件を整えておく必要があります。
日影を観測する「時期・時間帯」
まず、日影を観測すべき時期・時間帯が決まっており、通常は「冬至の8時~16時」を基準とすることになっています。冬至を基準とするのは2つの理由があり、①日照時間が最も短い、②太陽が最も低く影が最も長く伸びるからです。特に重要なのは後者で、影が長い=落ちる範囲が広いとも言えます。日影規制はその物件の影ができる範囲内で、影ができた位置ごとにそれぞれの用途地域に定められた制限が適用されます。複数の用途にまたがる可能性がある場合には、影ができる範囲内全てで基準を満たさなければならず、影ができる可能性がある範囲を漏らさず観測可能な冬至に観測するのです。
範囲
次は観測する範囲を規定します。規制対象は下記2つのゾーンにわかれています。
(1)敷地境界線から5~10mの範囲
(2)10m超
日影規制では2つのゾーンそれぞれに対し、連続で日影を生じてもいい時間の上限を設定していきます。
例えば「(1)5~10mの範囲は3時間以内、(2)10m超は2時間以内」といったようにです。そして、まさにこの各ゾーンに対する上限値を示しているのが日影規制の冒頭で覚えていただいた書式「◯h-△h」であり、先述の例は「3h–2h」と表記されます。
ちなみに「連続で日影を生じる時間」というと何となく言いたいことはわかるものの、お客様から「詳しく解説してほしい」と言われると意外と困る方も多いのではないでしょうか。本マニュアルでは実際にどのように日陰ができる時間が算出されるのか、大まかな流れは追っておきたいと思います。
大前提として「日影は時間とともに形状が変わっていく」というのは簡単にイメージが湧くと思います。その変化していく影を1時間ごとに図に落とし込んでいくと下記のような図ができあがります(黒い四角が建物で、そこから伸びる影の外周を線で表現しています)。
この図を用いて、例えば「8時」の影と「11時」の影が重なる範囲があればそこは「8時~11時までの3時間、連続で影が生じる」ということがわかります。具体的には下記の図の青い範囲ですね。
次は上の図のABCDEに注目してみてください。これらの点は連続で4時間日陰になる範囲を表しています。
Aは8時の影と12時の影が重なる部分の頂点です。つまりAを頂点とする範囲は8~12時の4時間はずっと日影になっているはずで、同様にBは9時~13時、Cは10時~14時、Dは・・・と、A~Eは全ての地点が連続で4時間日影になってしまいます。こうした「同じ時間、影ができる点」を結んでいくと今度は下記のような図を作ることができます。
こうした図を「等時間日影図」とよびます。ここまでくればゴールはもうすぐです。最後はこの等時間日影図に、隣地境界線と5mライン・10mラインを書き入れ、日影規制で定められた上限期間を超えてしまうゾーンができてしまわないかを確認していきます。下記にサンプル画像を用意しました。ここでは日影規制が「4h-2.5h」の地域を想定してください。
「4h-2.5h」の地域ですので「5~10mの範囲で4時間以上の日影ができる部分」と「10m超の範囲で2.5時間以上の日影ができる部分」が上限を超える不適合部分となり、図の中で斜線で示される範囲が該当しています。建築時にはこの斜線部分がなくなるまで建物を小さくしなければ建築許可がおりないということになります。
測定面の高さ
最後は「◆m」という高さの部分ですが、これは日影を測定する高さです。通常は1.5m、4m、6.5mの3種いずれかが指定され、それぞれの高さは1階、2階、3階の窓の位置を想定した設定になっています。
つまり日影規制は測定面が低く制限時間が短いほど厳しい規定になっており、住環境の確保が目的ですから低層住宅地ほど厳しいものになります。実は例に挙げた「3時間2時間、1.5m」という数値はかなり厳しい地域のものだったりします。
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介
新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。