都市計画法 – 役所調査マニュアル[実践編]

入門編では「そもそも役所調査とは?」や、8つの調査項目についてのざっくりとした解説を通じ、役所調査業務の全体像をお伝えさせて頂きました。実践編では8つの調査項目を深掘りしていき、一通りの役所調査ができる知識習得を目指します。ちなみに、調査項目は多岐にわたりますが、地域によっては必要性が薄い情報もあるため、全てを網羅するつもりはありません。ある程度の取引数が想定される都市部を前提に、汎用性の高いものに絞って解説をしていきます。

監修者

宅地建物取引士
荒川 竜介

新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

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宅地建物取引士

荒川 竜介(プロフィール)

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まずは『都市計画図』から

「都市計画法」の調査をするにあたって、一番重要な資料は『都市計画図』です。役所調査で閲覧しないことはほぼないので、まずは都市計画図の読み方を覚えましょう。

都市計画図は市区町村ごとに備え付けられており、地図上に都市計画に関連する情報が緑や黄色、ピンクなどのカラフルな色合いで表示されています。地図がカラフルなのは、地域ごとに異なるルールが適用されるようになっており、その種類ごとに色分けされているためです。色を見ればどのルールが適用される地域なのかがひと目でわかるようになっています。

ちなみに、上記「ルール」には様々な種類がありますが、代表的なものは「用途地域」で、「こっちは閑静な住宅街」「あっちは商店街」といったように、地域ごとに大まかな用途を定め、必要に応じた建築制限を設けています。(詳しくは次回の建築基準法で解説します)

[参考画像:左から文京区都市計画図、港区用途地域地区等図、港区都市計画施設等図]

そして都市計画図には地域ごとのルールだけでなく「どこに都市計画道路があるか」などの情報も網羅されています。ただ、役所によっては「都市計画」という大きなくくりでなく「用途地域図」「都市計画施設図」などと、情報を細分化し複数の資料にわけて用意することもありますので、調査する市区町村の書式に従って調査を進める必要があります。

なお、最近ではこの「都市計画図」をオンライン上で公開している市区町村が増えています。わざわざ役所に行く前に、まずは「◯◯区 都市計画図」「◯◯市 用途地域」といったキーワードで検索し、オンラインで閲覧可能かどうかを試されたほうがよいでしょう。

※東京23区については当サイトでまとめページをご用意しておりますのでよろしければご活用ください。

もしも役所で閲覧や質問をしたい場合は、都市計画を管轄する窓口にいく必要があります。厄介なことに役所ごとに窓口の名称が異なるのですが「都市計画」か「まちづくり」といった単語が使われることが多いのでそういった窓口を目指すか、正直に役所の入口付近にある総合受付で「都市計画について調べに来た」と伝えれば案内されると思います。役所によっては「建築指導」を担う窓口が担当している場合もあるので、事前に役所のホームページで窓口にあたりをつけておいたほうがスムーズかもしれません。

区域区分

入門編で都市計画法は「まちづくりの方向性をざっくりと決めていく」とお伝えしました。区域区分とは、まさに地域ごとに「この辺は人が住むエリア」「あっちは人里から離れているからなるべく手を入れないようにするエリア」といったようにエリアをわけていく制度です。どのような制度なのか、全体像を捉えたほうがわかりやすいので解説していきます。

まず日本の土地は2種類に分けられています。都市計画法を筆頭とする各種法令により規制をしたいエリアが「都市計画区域」に指定されており、それ以外の地域は「都市計画区域外」と呼ばれ、都市計画法等の規制を原則受けない地域になっています。都市計画区域を「都市計画法を適用したい区域」と読み替えると少しイメージがつきやすくなるかもしれません。都市計画法を筆頭とする各種の法規制を有効にしたいのであれば、その地域は都市計画区域に指定する必要があるという点を押さえておくと良いでしょう。

そこからさらに、都市計画区域の中でもある程度は人が住んでいるまたは住むであろうエリアを「市街化区域」に、自然が豊かな山間部などあまり人が住まないエリアを「市街化調整区域」に指定します。ちなみに、都市計画区域なのにどちらにも指定されなかったエリアは「非線引区域」と呼ばれます。

都市計画区域外は、もともとは法規制がいらないだろうということで「区域外」になったわけですが、時代の変化とともに「この辺、ちょっとだけ規制したくなってきたな・・・」というエリアが出始めます。具体的には山間部に建設されたインターチェンジの周辺などですね。役所としてはこうしたエリアを法規制したくなってはきたものの、都市計画区域外を都市計画区域に変更する手続きは大変ですし「そこまで大げさな規制が必要なわけでもないんだよな・・・」というなんとも悩ましい状況になりました。こうしたエリアをうまいこと片付けるために、都市計画区域外でも局所的に法規制をかけられる制度として生まれたのが「準都市計画区域」です。

したがって、区域区分により土地は以下5パターンのいずれかに分類されることになります。調査時には都市計画図を見ながら「調査地はどれに該当するのか」を確認しましょう。

  • 都市計画区域内 の 市街化区域
  • 都市計画区域内 の 市街化調整区域
  • 都市計画区域内 の 非線引区域(区域区分のされていない区域)
  • 都市計画区域外
  • 都市計画区域外 の 準都市計画区域

さて、区域区分はなかなかに奥は深いものの、本マニュアルの解説対象とする都市部においては、実はそのほとんどが①の都市計画区域内 の 市街化区域に該当します。ちなみに都市部においては都市計画図に用途地域の色がついていれば、(ほぼ)市街化区域と断言して問題ありませんので、わざわざ区域区分を調査する機会はほとんどないと思います。

「ほぼ」といったのはごく一部の例外が存在するためですが、都市部における調査では考慮する必要性は正直かなり薄いです。用途地域は原則、市街化区域内をさらに整理するために用いられるものなので、用途地域があるということはそこは市街化区域である可能性が非常に高いからです。しかし、市街化区域ではない地域に用途地域が設定されている事例が準都市計画区域や、地方の中小市町村がある非線引区域の一部に存在していますので「そういう場合もある」ということだけ何となく覚えておいて頂ければ問題ないかと思います。

もう少しそれぞれの区域について補足しておくと、市街化区域は地域ごとに建物の規模や用途等に制限があるものの法令を満たす範囲で建築が奨励されているのに対し、市街化調整区域原則として建築ができない点で大きな違いがあります。宅建の参考書などでは、市街化調整区域を「市街化抑制区域」と読み替えて説明を行うことが多いですね。ただ、市街化調整区域であっても建築を認める特例もありますので、もしも調査対象地が市街化調整区域であった場合には「ここには建築ができるか?」を最優先に確認すると良いでしょう。

都市計画道路 等

都市計画道路については、入門編である程度説明をしていますが重要度が高いため詳しく解説します。まずは調査すべき項目を洗い出しておき、各項目の説明に移りたいと思います。

  • 調査対象地との位置関係(敷地内・隣接・近隣)
  • 計画決定の内容
    • 名称
    • 計画幅員
    • 計画決定年月日
    • 告示番号
  • 計画の進捗
    • 事業決定はしているか
    • 優先整備路線の指定はあるか
    • 終了予定日は決まっているか
    • 完了済か

① 調査対象地との位置関係(敷地内・隣接・近隣)

調査対象の物件周辺に都市計画道路があった場合、まずは都市計画図で物件との位置関係を確認します。道路が敷地内にあるのか、接しているだけなのかなど、位置により調査すべき内容やどのように取り扱うかなどが変わってしまうためです。

以下3パターンのどれに該当するのか確認してください。

  1. 敷地内
  2. 隣接
  3. 近隣

① 敷地内」 は都市計画道路が敷地内を通ってしまっている状況です。この場合、都市計画道路の部分はいつか道路になる可能性があり、建築に制限がかかります。道路になってしまう部分とそうでない部分で、使い勝手が大きく変わりますので「どこからどこまでが都市計画道路なのか」という範囲の特定が非常に重要です。

厳密に調査をする場合、一般的な流れとしては調査対象である土地の形状・寸法・方位等を正確に表示した図(測量図等)を用意し、管轄する役所で都市計画道路の正確な位置を書き込んでもらうことで確認をします。ただ、手続きには必要書類などを準備しなければならず、申請してから回答が得られるまでに数日かかる場合が多いので、まずは①〜③のどれに該当するのか、大まかな位置の確認を優先しましょう。

ちなみに、比較的新しいマンションですと、「② 隣接」に該当するケースを見ることが増えるかもしれません。もともとが「① 敷地内」であっても、建築時点で様々なしがらみをなくすために道路部分を切り離してしまい、②の状況にしてから建築をすることがあるからです。②の場合は①よりも調査は楽になりますが、「本当に隣接しているだけか、敷地内に越境している可能性はないか?」というのは慎重に確認しなければなりません。

参考画像を1点用意しました。茶色い線が未完成の都市計画道路の計画線を示しています。赤い四角で囲われた範囲をご覧頂くと、きれいに計画線から逃げた位置に建物があることがわかります。逆に青い四角の範囲の建物には、計画線をまたいで建物が建っていますね。

参考画像:港区 都市計画図より抜粋 白金4丁目・2丁目周辺

この画像だけで判断すれば、恐らく青い四角の範囲の土地は「① 敷地内」に該当していそうです。敷地内のどこまでが都市計画道路なのか範囲の特定が必要になるでしょう。赤い四角の範囲に関しては、①か②だと思われますが、この画像だけでは判別できないので、法務局で取得できる測量図公図登記情報などの関連資料を収集して詳しく調べる必要があります。

また、比較的新しい物件であれば建築計画概要書という資料が残っているかもしれません。これは字面の通りの資料で、建築当時の土地の状況や、どんな建物を建てたのか、どんな法規制を受けたのかなど、建築計画の概要がまとめて記載されています。建築確認時に役所に提出された資料の写しであり、基本的には建築指導課で閲覧・取得ができるはずです。役所調査においてはかなり貢献度の高い資料なので、もし取得できそうであれば調査の早い段階で取得するようにしましょう。都市計画道路との位置関係についても、当時の状況が細かく記載されているかもしれません。

参考画像:建築計画概要書 一部抜粋

最後に「③ 近隣」については都市計画図の目視で確認できるはずなので特に注意点はありませんが、重説の作成時には大まかな位置関係を説明する必要がありますので、敷地からみた方角距離(例:南東側 約50m)は確認しておくようにしましょう。

位置関係のイメージ図

都市計画図がオンライン上で確認できる場合は、事務所で確認すれば問題ないですが、役所でしか確認できない場合は三角スケールという道具を用意しておいたほうがいいです。(三角スケールの使い方については、もっと詳しい諸先輩方の解説記事に譲りたいと思います。「三角スケール 使い方」で検索してみてください)

参考画像:三角スケール

ちなみにパソコン上で地図上の距離を測るには個人的には「Mapion キョリ測」というサイトが便利です。他にも類似サービスはありますので、ご自身でいくつか試してしっくりときたものをブックマークしておくと良いでしょう。

② 計画決定の内容

ここではまず用語の解説をしておきたいと思います。都市計画道路ができあがるまでにはいくつかの段階を経て計画が進んでいきます。

最初に「ここに幅員◯mの道路を作ろう」という大まかな計画が決まります。これを「計画決定」といい、次は工事の時期や規模・予算など、より具体的なことが決まっていく「事業決定」という段階を経てから工事が始まります。大まかにはこの2段階を理解できていれば問題ありません。ただ、念のためここでは細かく触れませんが一般的な流れも下記に記載しておきます。

都市計画道路が完成するまでの一般的な流れ

  1. 計画決定
  2. (優先整備路線への指定)
  3. 事業決定
  4. 用地収用
  5. 工事
  6. 完了・供用開始

実際にはそれぞれの段階の間に役所による調査や、周辺住民への説明会など、様々な手順が存在しています。しかし「役所調査をするうえで知っておいた方がいい」という範囲に絞ると、ひとまずは上記の6つを知っておけば問題ないでしょう。この6つの段階については次項の「計画の進捗」でもう少し触れますのでこの場では割愛します。

さて、都市計画道路がある以上は、少なくとも計画決定はしているはずです。したがって、重説で道路の概要を説明するために、計画決定の内容について下記情報を確認していきます。ちなみにこのあたりの情報から、恐らく都市計画図だけでは確認できないことが増え始めますので、不足する情報はどこで何を確認すべきか、各市区町村に確認する必要があります。

  • 名称
  • 計画幅員
  • 計画決定年月日
  • 告示番号

基本的にはこれらの情報がまとめて記載された資料があり、そのまま書き取るだけですので計画決定の内容に関する調査は難しくありません。

参考画像:港区都市計画概要 令和4年3月 P28より一部抜粋

名称は道路自体に「環状第◯号線」とか「補助線街路第◯号線」といった名称があるのでそれを確認します。
計画幅員は計画時点で定められた道路幅員です。注意点としては、区間の長い都市計画道路では場所によって幅員が異なる場合がありますので、そういった物件ではちゃんと物件周辺の幅員を確認しなければなりません。
計画決定年月日告示番号についてはほんとうに書き写すだけです。ただ、このあたりの調査からなんとなく都市計画道路の実態が見えてくるので少し触れておきましょう。

戦災復興~高度経済成長、都市計画道路の歴史

地域によってまちまちですが、都市計画道路の調査をしていくと昭和20年代〜40年代といった古い年代を見る機会がそれなりにあります。つまり「80年近く経ってなお、計画決定段階」という「じゃあ一体いつになったらできるんだ?」という御長寿さんがたくさん出てくるのです。

ちなみにこの年代が多いのはちゃんと理由があり、昭和20年に第二次世界大戦が終戦し、昭和30〜40年代は高度経済成長真っ只中、戦災復興や経済成長に伴って道路整備が爆発的に進んだ時代だったからです。

当時の日本は、諸外国からみると道路網のレベルが絶望的に低かったので、積極的に都市計画道路が作られていきました。しかし、計画した全てを一気に作ることはできません。そうこうしている間に高度経済成長によりどんどん住宅街が広がっていき、未着手の都市計画道路周辺にも住宅街はどんどん拡大していきました。道路予定地に家が建って人が住み始めてしまうと、立ち退き・買収をしなければ道路計画は進められません。膨大な手間・費用、つまり税金が必要です。しかも出来上がれば周辺の交通量は増えるので環境への悪影響を懸念し反対する住民も多いでしょう。いまやそう簡単に事業決定はできなくなりました。

ですので役所調査を繰り返していると「たぶんこれは完成しないだろうなー」という都市計画道路を目にする機会は少なくありません。都市計画道路の調査では「事業化する可能性はどの程度なのか?」という視点が重要です。それを読み解く上で「計画決定年月日」は大きなヒントの1つになりますので、覚えておきましょう。70年以上前の計画なのに、事業決定の目処が全くたっていないのであれば恐らくそう簡単には計画は進まないということが読み取れるのです。

ちなみに、告示番号の中には「戦復告第◯号」というものがあります。余談ですがこれは「戦災復興院告示」の略称ですので、まさに戦災復興計画だったことが読み取れる資料であったりします。

調査も重説も事実を積み上げていくのが大切
計画決定年月日の説明で「恐らくそう簡単には計画は進まない」という表現をしましたが、こういった推測を含む表現は実務においては不適切です。確実でない情報を顧客に渡すべきではないからです。したがって、顧客への説明時には推測部分は削除し、あくまで事実を伝えるようにしてください。慣れるまでは、下記のように事実を箇条書きにしながらまとめていくとよいでしょう。

 例
 ・物件の近隣で都市計画道路が計画決定している
 ・計画決定年月日が昭和20年代
 ・調査時点において計画決定以降の進捗はない

③ 計画の進捗

都市計画道路の調査において、物件との位置関係に次いで重要なのが「進捗」です。繰り返しにはなってしまいますが「事業化する可能性はどの程度なのか?」というのが重要なので、進捗を詳しく確認する必要があるのです。調べ方は先程ご紹介した6つの段階について、現状はどうなっているのかを確認してくことになります。

都市計画道路が完成するまでの一般的な流れ

  1. 計画決定
  2. (優先整備路線への指定)
  3. 事業決定
  4. 用地収用
  5. 工事
  6. 完了・供用開始

ここでの確認事項は以下の通りです。

  • 事業決定はしているか
  • 優先整備路線の指定はあるか
  • 終了予定日は決まっているか
  • 完了済か

ひとまず最優先で「事業決定はしているか」を確認してください。決定していれば、事業期間の長短はあれど近い将来道路になる可能性が非常に高いです。計画決定と同様に「決定年月日」「告示番号」があるはずなので併せて確認をしておきます。

また、管轄の窓口で確認をしていく中で、担当者からより詳しい近況を聞ける場合があります。「事業決定はしているものの一部区間の買収が難航しており、進捗が遅れている。恐らく延期になるだろう。」といった話を聞けることがありますので、念のため全て記録しておき、さらに聴き取りを行った窓口の名称日時担当者名まで控えておけば万全でしょう。

続いて「優先整備路線の指定はあるか」を確認します。これは「この道路は◯年までに優先的に計画を進めたい」といったように、事業決定とは別に整備する優先度の高い道路を役所側が指定する制度です。指定を受けている場合、仮に事業決定されておらず、計画決定のみの状態であっても近い将来に事業化する可能性が高い路線になりますので、注意が必要になります。

次は「終了予定日は決まっているか」の確認です。これは基本的に事業決定している場合に、事業の終了予定日が定まっていれば確認をします。ちなみに日付の確認と同時に、できれば「順調か、押しているか」といった進捗も確認しておきたいところです。状況を把握している担当者を捕まえるのが中々難しいことも多いのですが、都市計画道路の整備はなかなか順調に進まないことも多いです。「工事期間が延期する可能性」というのは購入検討者にとっては知りたい情報になるはずですので、できる限り情報収集に努めます。

[参考画像:用地収用が進行しているものの未完成の都市計画道路]

画像のような柵に囲まれた土地を見たことがある人も多いのではないでしょうか。これはまさに都市計画道路で事業決定後に用地収用(役所が道路用地などを買収すること)が進んだ結果です。柵で囲まれたところはすでに収用済ですが、工事区間すべての収用が完了するまでは原則着工ができないので、このように道路予定地として保全されています。

最後は「完了済か」という点です。「都市計画図上では都市計画道路があるので調査をしたが既に整備完了していた」というケースは少なくありません。これについてはわざわざ「完了しているかを調べる」というよりも、ここまでの確認事項を調べる中で「調べたら完了していた」というようなことのほうが多いと思います。もし完了済だったら、その都市計画道路の整備を理由に環境が変化するリスクがなくなるので、その旨を購入検討者に対して伝えたほうが良いでしょう。

【補足】その他の都市計画施設

都市計画施設は道路だけではありません。公園や下水道、高速道路なども都市計画によって整備される場合がありますので、都市計画図等でしっかりと確認しましょう。とは言え、道路より見る機会が少ないですし、基本的な調査方法は道路と共通していますので特に個別の解説はせずにおきたいと思います。

市街地開発事業

都市計画施設が市街地を線的・点的に整備するのに対して、市街地開発事業は一定のエリアを面的に区切り、公共施設と宅地をまとめて開発する性格が強いものです。根拠とする法律、目的に応じて下記の7種が存在しています。

  1. 土地区画整理事業
  2. 新住宅市街地開発事業
  3. 工業団地造成事業
  4. 市街地再開発事業
  5. 新都市基盤整備事業
  6. 住宅街区整備事業
  7. 防災街区整備事業

これらのいずれかに該当していた場合、市街地開発事業の区域内として建築の制限を受けることになります。なお、7種ありますが圧倒的に事例数が多いのは「① 土地区画整理事業」です。①と比較するとそれ以外の事業は事例数が少なく、⑤の新都市基盤整備事業に至っては、過去に一度も計画されたことがありません。もはや都市伝説のような存在になりつつあります。

さて、市街地開発事業も都市計画法によるものですので、通常は都市計画図に反映されていたり、都市計画を管轄する窓口で調査を行うのが基本です。しかし、進捗によっては専用の窓口が存在していたり、別の窓口を案内されるケースもありますので臨機応変に調査を行わなければなりません。とはいえ窓口がどこであれ、必須で確認すべきことは共通しています。焦らず下記について調査をしていきましょう。

  • 名称
  • 状況(予定区域・施行区域・完了済)
  • 完了予定日は決まっているか
  • 役所側で発行している案内資料、リーフレット等があれば取得する

土地区画整理事業だった場合、もっと確認すべきことがあるのですが、「都市計画法、建築基準法以外の法令」の解説時に詳しく解説しますのでここでは割愛します。また、市街地開発事業については、役所側で案内資料・リーフレットのようなものを用意していることが多いため、取得しながら担当者の説明を聞くようなことも多いです。ケースバイケースですが「事業の進捗は?物件への影響・リスクは何か?」という点を意識しながら聞くと良いでしょう。

まとめ

実践編の初回は8つある調査項目の内、1つ目「都市計画法」についてまとめました。ただ、都市計画法は建築基準法との関連性が強いので、次章「建築基準法」までで一区切りといったほうがいいかもしれません。建築基準法は調査項目が多く、2つ目の単元にして最大の山場を迎える予定です。しかし、理解がすすむと街並みを眺めながら「あ、ここは斜線制限が厳しいんだな」とか「この辺に用途地域の境界がありそう」とか、不動産のプロとして見える景色が変わってきて楽しい領域であったりしますので、めげずに頑張りましょう!

監修者

宅地建物取引士
荒川 竜介

新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。

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