公有地拡大推進法
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介
新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介(プロフィール)
公有地拡大推進法とは、都市計画道路を筆頭とする公共事業の用地取得を推進するための法律で正式名称は「公有地の拡大の推進に関する法律」といい公拡法と略すこともあります。
「都市計画道路の区域内で一定以上の規模の土地」など、条件に合致する土地を売買しようとする場合に、取引前に都道府県知事へ届け出ることを義務付けています。具体的に届出が必要な条件の代表例を以下に列挙しておきましょう。
- 200㎡以上 & 土地の一部だけでも都市計画施設に被っている
※地域によって50㎡以上の場合もある - 5,000㎡以上 & 市街化区域
- 10,000㎡以上 & 市街化調整区域または非線引き区域 など
これらに合致する場合、売主は事前に取引額等を届出なければならず、届出を受けた行政側は「この土地を買い取れるか、売主と協議したい地方公共団体いる?!」と希望者を募ります。この募集は3週間以内という期限付きで、希望者の有無に関わらず結果が通知されますが、通知がくるまでは地方公共団体以外の第三者には売却できませんので注意が必要です。また、もし結果が「協議の希望者あり」だった場合には、この売却できない期間はさらに延長されます。「希望者ありの通知から3週間を経過する」か「協議の不成立が明らかになる」までのいずれかが新たな期限となりますので、届出から最長6週間は売却できない期間が生じる可能性があります。
ちなみに、協議を理由なく拒否することはできませんが、公拡法には売却を強制する力まではありません。協議の結果として「売らない!」という選択は問題ないとされています。
※以下より公拡法に該当した場合の重説への記載例をご覧頂けます。
国土利用計画法
公拡法によく似た法律に国土利用計画法(略称:国土法)というものがあり、公拡法とは立法趣旨が異なるものの制限が似ているので同時に覚えておくのを推奨しています。
国土法には「投機的取引による価格高騰を防ぐ」「国土を適正かつ合理的に利用する」といった意図がありますが、役所調査・重説作成で関係するのは主に前者です。公拡法と同じように取引対象の土地が一定以上の規模だった場合に、届出を義務付けているので対象地が該当するのか注意しておく必要があります。なお、具体的な規制対象は以下のとおりです。
- 2,000㎡以上 & 市街化区域
- 5,000㎡以上 & 市街化調整区域または非線引き区域
- 10,000㎡以上 & 都市計画区域外
※一筆だけでは対象面積未満でも、取引対象の合計が対象面積を超えれば届出が必要です。
対象地が上記のいずれかに該当した場合には「契約締結日を含めて2週間以内に、市町村長を経由して都道府県知事へ届出」が必要になります。これを国土法における事後届出制と呼び、届出がされた土地は利用目的を審査されます。ちなみに審査の結果として取引が無効になるような強制力はありませんが、助言や公表措置を受ける可能性はあります。
ここまでの説明は、実は国土法の一部のみを解説しており厳密には網羅できていない部分があります。が、実務で必要な範囲に限れば十分説明ができていますので、以下に記載する解説は読み飛ばしても問題ありません。
ここまでは「事後届出制」のみに触れていましたが、国土法では土地取引に対する規制が厳密にはあと3種類存在しています。しかし、残りの3種のうち2種は対象となるエリアが存在せず、最後の1種も執筆時点では東京都小笠原村の一部のみが指定されており、それ以外の地域には適用されません。小笠原の土地を扱わない限り必要のない知識ということになります。
どういったものかだけさらりとお伝えしておきますが、実は国土法では区域区分のように国土を以下4種に分類しています。
- 規制区域(許可制)
- 監視区域(事前届出制)
- 注視区域(事前届出制)
- 指定なし(事後届出制)
①の規制が最も厳しく、順に緩くなっていくイメージです。詳細は省きますが、これらの区域に指定されると土地の取引が容易にできなくなりますので、健全な土地の流通を阻害しないよう積極的には指定されてきませんでした。実際に ① と ③ は今までに指定された実績がありません。
②については、バブルの地価高騰対策に創設された経緯がありますので、90年代にはそれなりに広範囲が指定されていましたが現在では小笠原村のみを残して解除されています。小笠原村の都市計画区域内(父島・母島の本島)で500㎡以上の土地を取引する場合には事前に都道府県知事に届出を行わなければならず、利用目的・取引価格が著しく適正を欠く場合には取引の中止や変更を勧告される可能性があります。
そして、①~③の指定を受けていないエリア、つまりは小笠原村以外の全地域は④の「指定なし」という扱いになり、先述の事後届出制の規制対象となっています。
ちなみに、宅建のテキストを見ていくと「国土法の事前届出を行う場合、公拡法の届出は不要」という記載を見ることがありますが、現時点で言えば小笠原のみで適用されるルールなので、覚えておく必要性は薄いでしょう。
監修者
宅地建物取引士
荒川 竜介
新卒から合計4年半不動産仲介の現場に従事。 その後、マンションリサーチ社の執行役員を経て、2018年12月にミカタ株式会社 代表に就任。実務者目線で「使える情報」の発信に重きをおいています。